今野敏「隠蔽捜査」より

今野敏「隠蔽捜査」(新潮文庫)より

 

受験勉強には、集中力と持続力が必要だ。さらに計画性も大切だ。言うなれば、一つのプロジェクトだ。遊びたい、さぼりたい、楽をしたいという欲望を抑え、ひたすら目標に向かってこつこつと努力を続ける。受験勉強に近道はない。そして、結果は、はっきりしている。

受験制度が人間性を失わせるなどという愚かな議論がある。

実際に受験に勝ち抜き、日本の最高学府に入学し、さらに国家公務員甲種の試験に合格した竜崎にしてみれば、享楽的に毎日を暮らし、努力もせずに大人になった者のほうが、よっぽど非人間的だと思う。人間が犬猫と違うのは、目標を持ち、それに向かって自分を律して努力する点なのだ。

発想を豊かにする教育などと、ばかなことを言っている教育評論家がいるが、人間、追いつめられたときの発想力こそ大切なのだ。追いつめられたことのない子供に本当の発想力など芽生えるはずがない。

 

隠蔽捜査(新潮文庫)